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〈特別公開〉ひろゆき論――なぜ支持されるのか、なぜ支持されるべきではないのか

全文公開を終了いたしました。 

本記事を収録した書籍『曖昧な弱者の時代』(岩波新書)を2026年5月に刊行いたします。 

 (『世界』2023年3月号掲載記事を増補改訂) 


はじめに

 ネット上の匿名掲示板サイト「2ちゃんねる」(現在は「5ちゃんねる」)の創設者、ひろゆき、こと西村博之が人気を博している。

 1999年5月にスタートした2ちゃんねるのほか、2007年1月にスタートしたニコニコ動画など、ネットの普及期にいくつかのサービスの立ち上げに関わり、起業家として成功した彼は、2010年代後半からユーチューバーとして活動し、視聴者からの相談に答えるライブ配信番組を通じて人気を博した。さらにその間、ビジネス書や自己啓発書を次々と出版し、ベストセラーライターとして名を馳せるかたわら、テレビ番組にコメンテーターとして出演するなど、マスメディアでも広く活躍するようになる。

 その人気はとくに若い世代に顕著で、若者や青少年を対象とする調査では、憧れる人物などとして頻繁にその名が挙げられるほどだ。その配信番組でも、スーパーチャットと呼ばれる投げ銭機能を用いて有料の相談を受けようとする者があとを絶たない。今やその存在はネット上のインフルエンサーの域を超え、若い世代のオピニオンリーダー、それもカリスマ的なそれとして広く認知されていると言えるだろう。

 しかしその一方で、その振る舞いや発言が物議をかもすことも多い。2ちゃんねるの管理人時代に誹謗中傷の書き込みに対処することを怠ったため、多くの訴訟を起こされ、多額の損害賠償を請求されているにもかかわらず、裁判所に出頭せず、「踏み倒し」を続けていることから、その倫理観の欠如を指摘する声も多い。

 また、2022年10月には沖縄県名護市辺野古を訪れ、米軍基地建設反対運動を中傷するツイートを投稿したことから、大きな社会問題となった。市民運動を小馬鹿にしたようなその態度にリベラル派は一斉に反発し、批判の論陣を張ったが、しかし彼が態度を改めることはなかった。

 こうしたことから彼は、良識派、とりわけリベラル派のメディアや知識人などからすこぶる評判が悪い。その倫理観の欠如や政治思想の浅はかさなどの点ばかりでなく、「冷笑」と呼ばれる、人を小馬鹿にしたようなからかい方や、「論破」と呼ばれる、揚げ足取りまがいのディベート術など、その独特の態度が批判の対象とされることが多い。

 しかし彼自身はそうした批判を意に介することもなく、面白おかしくリベラル派を冷笑し、論破し続ける。するとその支持者は彼のそうした態度に一斉に喝采を送り、彼にならってリベラル派に反駁する。辺野古のツイートには多くの批判があったにもかかわらず、28万もの「いいね」が付けられ、彼の人気を一段と高めることになった。

 こうした「ひろゆき人気」の背後には何があるのだろうか。

 *****(公開終了)*****

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著者略歴

  1. 伊藤昌亮

    1961年生まれ。成蹊大学文学部現代社会学科教授。メディア研究。著書に『炎上社会を考える』(中公新書ラクレ)、『ネット右派の歴史社会学』(青弓社)、『デモのメディア論』(筑摩選書)、『フラッシュモブズ』(NTT出版)など。

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